ひとりごと」カテゴリーアーカイブ

絶望と希望;Freedom is Kaori, in Beijing 2022

北京冬季オリンピック、なんだかんだで観てしまっている。東京オリンピックのときはコロナ状況もあって開催時にあんなに絶望的な気持ちになったのに、それを上回る感染状況になっても自国開催でないと純粋な観客になれてしまうのでいい気なものであるとも思う。でももともとオリンピックは冬のほうがずっと好きだし、連日フィギュアスケート、スノーボード、スキージャンプ、カーリングなど、熱さと冷静さがめまぐるしく行き交うコンペティションが繰り広げられていて、つい引き寄せられてしまう。

昨夜の女子フィギュアSP最終滑走の坂本花織の演技が素晴らしかった。普段使わない感情が余っているので、正直泣いた。

2アクセル、3ルッツ、着氷した足からもう次の流れに入っていく、途切れないスピード。当たり前ながら、改めてフィギュアスケートはスケーティングのスポーツなんだなと思い知る。チェンジフットのコンビネーションスピンを終えた後、氷上で止まって肘から両手を開いて、ふっと微笑んだその笑みで、後半の幕が開く。流れるようなスケーティングからの、3フリップ+3トウループのコンビネーションはスピードがあるのに止まって見えるような、そんなジャンプで、着氷からも流れは途切れない。そして圧巻のステップシークエンス。全身から、指先まで躍動感に溢れて、まるで野生動物のような生命感で跳ねて、最後のレイバックスピンに流れ込む。

4年前のアメリ、可憐な少女のような滑りから体のありようも変化して、生き生きとした女性の生命をスケートの中で表現しきった。
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monologue

この1か月色々なことから離れてみて、いかに自分の頭が今までおかしかったか、という感じがしていて、ようやく正気に返ったような、そんな感じだ。この数年仕事は片手間にしかしていないのに、休養をちゃんとしていたかというとやっぱりそんなにできておらず、かといって仕事以外の大事なこともほとんどできていない。

医療って人を助けることではない。医師の役割は特にそうだなと思う。看護はまた違うかもしれない。でも基本的には、その場の限界と適切を見極めて、その場の最適な仕事をすることなのだ。誰かを慰めること、苦痛を和らげること、優しくすることはその範囲において織り交ぜるものであって、それが先に来てはいけない。

というより、愛は存在の深みにあるものであって、過保護な母のようにひけらかして他者を子ども扱いすることではない。

そもそも自分は人助けに向くオープンさとか、おおらかさとか、温かさとか、そういうものに欠けているように思う。むしろ公正さとか合理性とか最適化とか、そういうものへの指向性が強いのに、人助けとか役に立つとか優しくあることへの義務に乗っ取られてしまったのは、自分が女性に生まれて、この社会が女性に求めるものを、生き延びるために知らず知らず取り入れ優先しまったからである気がする。この社会でどう生きればいいのかとか、数十年生きてもさっぱりわからないんだけれども、N国とか見てるともうむしろなんでもありなのかなと思い、絶望するとともにほっとする。なんかもうなんでもありだから堂々と生きていいや、みたいな。どうせあとそんなに生きないし、のような。
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Twitterとじました。

長らく迷っていたが7年続けたTwitterアカウントは閉じた。寂しくなるかと思ったが、むしろほっとした。たくさんの出逢いがあったが、なんかしばらくはもう出逢わなくていいかなという気持ちになったのと、断片化された言葉や情念、思考のかけらが大量に流れてくると自分の中に失敗したテトリスのように積み上がってきて、いっぱいいっぱいになり終了、という感じが一番近いような気がする。SNSは出逢いのためのフォーマットが揃っていることで、そこにいる人と平等に出逢うことができるが、逆に人の決めたフォーマットの上に乗って言葉を発しているとそのお作法が結局だんだん息苦しくなる。自分は枠組みが苦手な傾向があって、仕事もそうやってあんまり気が進まなくなっていったし(適応しようとかなりがんばったが)、共感されても支持されても批判されても、結局他者から何かを向けられるとそれを拾おうと一生懸命になってしまい、自分の中にもやっとあって排出したかったものを見失ってしまう傾向があるので、自分で管理できるブログのほうがしばらくいいかなと思った。Twitterの素敵だったアカウントを思っては懐かしんだりするが、自分がその中に入って交流しなくとも外から見ていても充分楽しめるので、時々検索しては眺めている。それで充分である。もしまた何かを広く発信して広く人と出逢いたくなったらTwitterのアカウントを作るかもしれないが、まあもうしばらくはいいかな。自分の自由に集中したいと思う。

To be original, or not ?

少し前のことになるが、ロバート・キャンベル氏と多和田葉子氏のとある学会での対談を、たまたまインターネットで観た。普段あまり聴くことのない文学的な対談で、ドイツ在住でドイツ語でも著作のある多和田氏の特異な言語感覚もあってとても興味深かったのだが、その中でcultural appropriateという概念について語られていた。
私はその概念について初めて知ったのだが、cultural appropriationとは、その文化に属さない者がある文化の因子を取り入れることで、いわば文化の盗用のことらしい。キャンベル氏は和服が好きでよく着るようなのだが(私も上野か本郷で和服を着たキャンベル氏を見かけたことがある)、いわゆる欧米人の前では、それはおかしい、と思われることがあるとのことだった。日本人からは言われないとのことである。なので、どうも、cultural appropriationというのはその文化の人から出た盗用の不服申し立てというよりは、その文化に属さない人々の側から出る違和感のようなものなのだろうか。appropriateという単語、長らく適切なという意味しか知らなかったのだが、今回初めて「私物化する」という意味もあるのを知った。
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Sky high, over us. – 6 Aug

今日も夏の空は青くて眩しかった。

65年前の今日、広島の空で光った光はどんな風にその空を灼き尽くしたのだろう。今朝降り立った駅で朝 8時15分に胸騒ぎがした。今年は初めてアメリカの駐日大使と国連事務総長、英仏の代表が平和祈念式典に出席したとのことだが、なぜ65回目の今年なのだろう。その意味ってどのようなものなのだろうか。

2年ほど前の新聞で、太平洋戦争のときに家族を空襲で失った市民のグループが、空襲を行ったB29のパイロットに話を聞く機会を設けた、という記事を読んだことがある。空襲の被害に遭った女性からの聞き書きだった。記憶だけれども、こんなような内容だった。
アメリカからやってきた元パイロットは、思ったのと違って、優しい青い目をした人だった。自分とあまり年が変わらなかった。彼もまた、あの時少年を少し脱した程度の若者だったろうと思われた。彼はB29に乗って飛び立った日の状況を、淡々と語り出した。あの日のことが思い浮かんで、何の気なしにこう言った。
「あなたはあの日、あの空の上にいて、私たちは、空の下にいたのですね」
その途端、今まで穏やかに話していた彼は急に泣き崩れて、それ以上話を続けられなくなってしまったのです。

空襲の日、同じ空の上と下で、人々は分かれて出会った。地上から上を見上げた「私たち」と、空から下を見下ろした「彼ら」の視線は、根拠のあいまいな憎しみとおそれとともに、空の途中で出会った。
いや、たぶん出会ったようでいて、ほんとうは出会っていなかったのだろう。ほんとうに出会っていたら、こんなことにはならなかったのだと思う。
空を自在に飛べる技術があったとしても、自由とは限らない。

出会っているようでいて、ほんとうは出会わないまま通り過ぎることがなんて多いのだろう。
運命や縁が絶えず私たちの出会いをつなぐけれども、私たちは目を伏せたまま出会ったふりをして通り過ぎる。

一時期色々な年齢層、社会的階層、文化圏の人たちに出会って対応し続けることに疲れて、なるべく人と出会わないように仕事も減らして引きこもろうとしたことがあった。しかし人生はそれを許してくれないようで、遠慮なく次々にまた縁がやってきた。
そして今も否応なく出会い続けている。戸惑いながらも、出会ってしまうと相互作用が起こり、化学反応のように連鎖していく。違う人々と出会う中で、写し鏡のように、知らなかった自分の部分とも引き合わされ、また互いの間に何かが生まれていく。縁は織物のようだ。

空を見ながら、私たちは違う場所で違う時間の中にいても、同じ空を見ることができる、ということを思い出す。

子どもの頃、空を眺めながら感じた、自由への憧れと渇望感はたぶん今もあまり変わっていない。自分で肯定できるほど、自由だとはまだ思えない。
けれどどうせ否応なしに出会い、関係が生まれ続けるのであれば、生まれた場所や育った環境や今いる状況や人種や文化やさまざまな属性と制限とを超えて、人々と、「質」の中で、ほんとうに出会いたいと、切に願う。
同じ空を見ているなら、そこに何か善きものをともに描いて織りなしていきたいと、思う。そして、まだか弱い芽こちら。だけれども、美しい花を咲かせるような何かが今、発芽しているのも感じている。

と、今日も昼に夜に空を見上げて、そんなことを思ったりもする。たわいもない夏の日でした。
明日よりスイスのDornachに行ってきます。場所はこちら。

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