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ロックで読み解く貧困 (3) 尊厳の貧困 – Aerosmith “Janie’s got a gun”

感情的に不安定で、自分というものの感覚を持てない。いつも自信がなく、他者もしくは場の空気を読み、自分を抑圧しながら、時にその怒りや苦しさを反動で噴出させる。怒りや苦しさを自覚できればいいけれど、それを感じてはいけない、と思うと、その場から「いなくなる」。肉体はそこにいながら、意識はそこにいることをやめて、「抜けてしまう」こと。その時空間に存在することをやめてしまう、それが解離という現象である。
自分自身を振り返ると、幼少期は土も緑もない東京の下町で、閉塞的な空間と人間関係と価値観の中で、喘息発作でいつも疲れており、そこから抜けたくて進学校に進んで医者になったものの、常に自分自身の価値観や欲求とは違う振る舞いと共感と自己犠牲を公的にも私的にも要請され(ていると思い込み)、やはりずっと疲れていた。そうして記憶がいつもくすんでいるというか、よく覚えられなくなった。今振り返ると軽く解離していたような気がする。不惑を越えてようやく、人間には断る権利と表現する権利、共感「しない」権利、自分のしたいことを行為する権利があると腑に落ちた。そうすると、今まではなにやってたんだろうという気持ちとともに、今までとらわれていた数々の苦痛が急に現実感がなく、それらは本当にあったのだろうかという風に感じたりもする。ひとの記憶のリアリティは本来はそんなものなのだろう。現在の感情に多分に修飾されていて、その強さによってリアリティを感じたり感じなかったりする。
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