日別アーカイブ: 2010年7月10日

内発的動機は引き出せるのか?

前エントリからの関連。

他の人の「内発的動機」、つまり「やる気」を引き出すことは可能なのだろうか、という問いをずっと考えていたのですが、一応自分なりのまとめ。

短くいうと、

「引き出す」ことは不可能。
ただし、「おぜん立て」は可能。

たぶん、種と同じと考えてみればよいかと。
種が芽を出すタイミングは、種と宇宙の力が決める。まいた人ではない。種をおだてたり、無理やりせきたてたりしても芽を出させることはできない。
ただ、まいた人は、水をやったり、温度を整えたりして元気な芽が育つよう、おぜんだてをすることができる。
その結果、その果実を皆が受け取ることはできる。

近年いろいろな「他人のモチベーションを動かす法」みたいな本やメソッドが出ているわけですが、どうも今一つ?な気がして。
かといって、「じゃ、芽を出すのは君の仕事だから。俺にできること特にないから」と放置するのではなくて、「耕しておくから、いいと思うタイミングで芽を出してね」と「おぜん立て」に徹して待つ、ということはできるかも。

ま、この適切なおぜん立てが難しいところで。だいたい、水やりすぎたり、変な薬や肥料を変なタイミングでまいたりしてだめにしちゃいがちなんですよね。
やることやって、待つのってむずかしい。「人事を尽くして天命を待つ」っていい言葉があるんですけどね。人事を尽くさないで天命を待っちゃうか、人事でどれをやるかわからなくなっちゃったり、天命の領域までやりたがっちゃうか、になったり。

他の人よりある意味もっと難しいのは、自分自身かもしれません。
これも自分で動いて「おぜん立て」するしかないんでしょうね~。生まれた環境は選べないのは同じでも、植物とちがって人間は動けるわけだしね。
とりあえずやってみて失敗しながら修正、でしょうかね。

Alcoholics Anonymus のニーバーのお祈りから。

God, grant me the serenity
to accept the things I cannot change,
the courage to change the things I can,
and the wisdom to know the difference. 

神さま、私にお与えください
自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを
変えられるものは変えていく勇気を
そして、二つのものを見分けるかしこさを 

(色々バージョンはあるけど、この訳がけっこう語呂的にも好きです)

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インタレストマッチ – 広告の掲載について

【書評】創造性のOS:モチベーション3.0

エキサイトブログに広告が入るようになってしまった。
前はデザインが好きでしたが、どうも最近デザインはパンチがないわねえー。
でもかといって移転先も今ひとつみつからないので、このまま行きます。

モチベーション3.0読みました。
なかなか面白かったです。

「やる気に関する驚きの科学」
http://www.aoky.net/articles/daniel_pink/dan_pink_on_motivation.htm

をふくらませた感じです。基本路線はこのサイトの内容と同じ。

人間の(行動の)動機をOSのバージョンにたとえています。
そのOSとは、

〈モチベーション1.0〉…生存することを目的としていた人類最初のOS 。 食欲&性欲・危険回避。

〈モチベーション2.0〉…報酬をもとめ、罰を避けるという外発的動機づけによるOS。アメとムチ。
ルーチンワーク中心の時代には有効。21世紀に入り、ソフトが複雑化したためか、よくクラッシュ。

〈モチベーション3.0〉…内発的動機づけによるOS。内面からの「やる気」「遊び」「自律性」に基づく。柔軟性が高く、複雑な問題をよりクリエイティブに解決し、自己発展していく。

この本で衝撃的なのは、
「複雑な問題、もしくは創造性の必要な課題をおこなうとき、報酬を示されていると、報酬がないときに比べ、処理時間が遅くなり、クオリティが落ちる」
ことが数々の実験で示されていくところでしょうか。子どもでも大人でも、アメリカでもインドでも同じような実験で同じような結果が出る。

報酬ありのグループが勝ったのは、単純作業の場合だけだった。
また、報酬を示された側は短期的にはがんばるのですが、報酬をなくすととたんにやる気をなくし、成績も下がった。報酬を出すと「遊び」が「仕事」になってしまった。
そして報酬を出し続け、上げ続けないとやらなくなってしまう(これって依存症のメカニズムだ)。

つまり「85点以上とったら、これを買ってあげる」は、基本ダメな動機づけってことになりますね(^^)
まあ普通に考えてもそうなりそうですけど。

自分のことを考えても、報酬でやる仕事だと「う~仕事だからやるか~」なダウナーなモードになりがちです・・・お金に関係なく自分でやろうと決めたタイミングでやることのほうが確かに勢いでやれるし、疲れない(←これが重要かも)。

短期的な報酬をはじめから追うくせがつくと、長期的にはダメになる。
なくそう、四半期決算と成果主義(笑)

会社のような組織において、個人個人の内発的動機づけからいきいき動けるようにして、なおかつ全体の調和がとれて発展していく、という動きを起こすには少なくとも優れたリーダーか、指揮者がいりますね。

そんな会社の例であがってたもの。
社長が旅行から帰ってきたら知らないうちにオフィスが2回移転してた。しかも前より小さくなってた、というのは笑える。「わたしはこれを誇りに思っている」だそうです。

奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ

リカルド・セムラー / 総合法令出版

もちろんではクリエイティブな仕事はいつも無報酬でやるべきだというわけではありません。それこそ内発的動機の妨げになるので。
でも普段から自分の中の内発的動機というものに気をつけていれば、報酬の有無にかかわらず自分の創造性が花開くタイミングがわかると思います。

あと、他人の自律性を信頼する、ということもとても大事ですね。私もつい不安から先を読んでコントロールしたくなるほうなので、きちんと流れを見ていつつも、落ち着いたかまえで待つ、という姿勢も重要だと思いました。

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

ダニエル・ピンク / 講談社