底抜け世界

世界の底が抜けたような
そうではなく世界の天井が抜けたような
というわけでもなく両方が抜けたような
とはいえもともとなかったような

世界の裏表をひとひねり
つなぎあわせて
メビウスの輪を永遠に歩きつづける

立っているかぎり、きみは永遠に上で、表だ
まだ見ぬ裏面を、思いながら、歩いていけば表面しかなく
表は永遠に裏にならず
裏は永遠に表に浮上せず
沈んだまま、やるせなく、沈鬱に
われらの表を駆動しつづける

そんな平面に居住するのは、いかがですか?
快適ですか?
しあわせですか?

ただただ、存在しつづける存在
いかがですか?

短歌 STAY HOME

けものより来たりしやまい流行れどもわれ関せずと花の咲くなり

宿主から追い立てられしウイルスにSTAY HOMEと叫ぶむなしさ

コロナとは太陽の冠かがやける春の唸りを横目に過ぎる

短歌 爽快

あなたとは話すことなどもうなにもないなにもないことの爽快

お別れを言うほんとうのお分かれを祝して空に抜けた歯投げる

#短歌 #tanka

短歌 朝

昼が来てまた夜がきて朝になりわたしのこころも呼吸している

あさつゆのみずみずしさのきもちなるとうにわすれしものとおもへど

永遠に朝の来ずともわがいのち闇にひそかにうごめいている

短歌 ことばにならない

クレマチス言葉にならない思いならすべてこの世の果てへと投げて

鍵をかけ心の奥に閉じ込めた言葉と気持ちが錆びついている

きみの声がわれの氷を溶かすとき濁流のごと流れだすもの

短歌 春のありよう

青く固い割りたての竹で書いたよな 愛のことばを手にして眠る

花曇り混ざりつづける色十色 終わらぬ午睡 終わりなき夢

なにもかも曖昧なままひっくるめ愛していたい春のありよう

短歌 Reality of the real reality

自らが投げたものこそ戻り来る気づいてもなお投げ続けてる

結局のところおそろしいほどの罠罠罠と少しの真理

代用の代わりの代用われわれはリアルをどこにおいてきたのか

 

俳句 花冷え

花冷えに咲き急ぐなよはなざくら

溜めてきた怒りを噛んで花の塵

何もかも落花のなかに棄ててゆく