短歌 坐禅の分子生物学

坐りをる吾(あ)の丹田に満ちくらむ 分子レベルの闇しづかなる

核内のmRNA起動せよ 吾の不甲斐無さ喝破するため

短歌 はつぐるい

官能をうたう映画の初回朝 初老男女の独りが集う

君に告ぐ物狂おしさ腹ばいのまま訝(いぶか)りし君恨めしき

むかひあひ美しくなれりと君のいふ その日に紅(あか)きつぼみひらきぬ

蒸す朝に蕾ひらかず腐りおち ただじりじりと身悶えている

短歌 春に狂ふ

くるおしくいまひらく花白のなか 紅が混じって春に病んでる

一匹の飼い馴らせない雌の棲む 我が身のうちに爪立てるなり

子らよ見よ庭の片隅身のうちの 歓び恥じず咲かすなり合歓(ねむ)

吾(あ)もかつて獣なりにし如何やふな 夕暮れ見しか遺伝子にきく

どうみてもありえないのに道端で つまづくように愛してしまった