コラム」カテゴリーアーカイブ

HOME, is where I want to be…

COVID-19禍の中、ここまで”Home”という言葉がクローズアップされたことは、今までもあまりなかったのではないかという気がする。
Stay Home, と曇りなく叫べる人は、物的・人的資源を含めてゆるぎないHomeがある人なのだろう。もしくは自分自身は恵まれていなくても、Homeを理想化できるほどの健全な心的リソースがあるか。
先が見えない中で、家族や同居者と苛烈な関係性にある人たちや、弱い人たち、たとえば子どもや障害のある人、高齢者を守らなければいけない状況にある人たちや、蓄えや住環境や人とのつながりに恵まれた状況にない独居の人は、STAY HOMEはなかなか辛い言葉である可能性もある。HOMEが辛い場所だった時間が長かったので、自分としてはHOMEや家や家族という言葉に複雑に絡み合った感情が湧き起こってくる。

こういうとき、つい自分の原点にある音楽に戻る習性で、Youtubeで色々好きだった曲を聴いている。
Talking Heads “This must be the place”は、直球でHOMEの歌だ。

こんなときでなくても名曲だなあと思って聴いている。けれど、今は、歌詞の単語のひとつひとつが、感情をもって現れてくる気がする。
続きを読む

声をあげる。というか、声をのこす。

コロナ禍の中、案の上、というか意外にも、先日のサンデーソングブックの達郎の発言が誤解されて、というか利用されていたので一言書き残しておきたい。

山下達郎「今、一番必要なのは団結」 ラジオを初めてテレワーク収録 リクエストもハガキからメールに

この日、いつもわりと毒舌だがこんなに怒っている達郎は初めて聴いた、と思うくらい、達郎は怒っていて、自分はいつも政治的なことにはあえて明言していないが、今回は怒りを禁じ得ません、と滔々と、でも淡々と、寄稿を朗読するようなステートメントを行った。その上での記事のコメントだったのだけど、ここだけ切り取ると見事に大政翼賛的なものにおさまるように見えてしまう。
でも私が昨日聴いて受け取ったものは、生きること、みんなが生き延びることに心を向けよう、だったんですよね。なんなら「ほんとうに怒りを向けるべき先に対して」もっと怒れ、くらいの。
でもたぶん、字面にしたり編集すれば、たぶんその文脈や思いや感情が切り捨てられて、「団結しよう」「批判はやめよう」「プロパガンダはやめよう」というイデオロギーに利用されていく。
続きを読む

東京、コロナ、女子、雑感

もう言っても詮ないことなんですけど、東京都の1日あたりPCR検査可能件数(地方衛生研究所・保健所の分)、ずーっと220件なんですよね(厚労省サイト参照 )。 4/8の検査件数が394件になっているので、感染研、検疫所、民間検査会社(SRLとかの)、保険適用できる指定病院、大学は含まずの数字で、含めると今13-400(4/3が最大で557件)やっている。まあ急に保健所や衛生研究所の手は増やせない、のもわかるけども。

東京都3月前半はまだ陽性率が数%で、3月後半から10%超えだして、4月に入り週間陽性率で35%くらい。4/8の検査実施人数が366人、陽性患者数が144人なので40%ほど。感染者数が小さいうちはクラスター分析一筋での対応は意味があったと思いますし、3月前半でPCRをガンガンやる妥当性はそんなになかったと思いますが、今はもう十分に検査前確率高いと思う。こうなる前に検査能力増やしておくんだと思っていました。でもそれが難しかったんだなあと。

ひとたび東京で多発したら、人の出入りも多いし、追えなくなるシナリオは当然専門家の人たちの頭の中にはあったと思う。で政治と行政がオリンピック開催に主眼がいって、またヨーロッパよりは拡大スピードが遅かったのもあって、あのようにはならないほうのシナリオになんとなく賭けちゃったというのもあると思うけど、それにしても、1か月ほど猶予があり、またたぶんこういう事態も予想はしていただろうに検査能力(検査数ではなく)増やせなかったことが、本当に日本や東京の政治や行政システムの限界なんだなあと思いました。どういう経緯で決定がなされていったのか、空気も含めて知りたいけど、どうせよくわからないんだろうな。

続きを読む

人間の尊厳を修理するということー映画評「女を修理する男」

ドキュメンタリー映画「女を修理する男」を観た。

コンゴの産婦人科医、デニス・ムクウェゲ氏のことは2018年のノーベル平和賞を受賞で初めて知った。コンゴ東部のルワンダとの国境地域には今も武装勢力が潜んでおり、活動資金とするための鉱物資源を得るため、地元の人々、特に女性や子どもを暴行することが問題となっている。ムクウェゲ氏はコンゴ東部キヴ州の産婦人科医であり、この暴力によって心身を破壊された5万人の患者を治療した。

女性器や直腸などその周囲の内臓器官が、暴行で破壊され、瘻孔ができると、性機能の問題だけでなく排泄もコントロールできなくなり、それ以前に消化管からの感染を起こすと生命の危険なある。そのような状態の治療は、先進国の整った医療環境であっても並大抵のことではない。先進国よりは医療環境も良くないコンゴの病院で、日々手術を行い、そして女性たちの心身を救っているということに驚きを覚える。機能の再建どころか生命を救うことも、日々戦いだろうと想像した。しかも紛争は未だ終結していないし、彼自身の生命すら狙われ続けている。

人間の悪意と暴力の痕に日々接するということの壮絶さ、そしてそういう活動を女性でなく男性の医師が行っているということ、その人とはどのような人なのか、知りたいと思った。
続きを読む