映画「グッド・ハーブ」

シネマート新宿で、メキシコ映画「グッド・ハーブ La buenas hierbas」を観た。

監督:Maria Novaro
公式サイト:http://www.action-inc.co.jp/hierbas/

舞台はメキシコシティー。主人公は、幼い息子を育てるシングル・マザーのダリア。薬草学者の母、ララの助けを借りながら子育てをしているが、ララが認知症と診断されてしまう。古くから伝わる薬草学の書物を必死に紐解いて、自分を治療しようと焦るララ。ダリアは献身的にララを介護するが、ララの病状は進行していく。

ララもまた離婚したシングル・マザー。薄れていく記憶の中で、ダリアの生みの父は、離婚した父ではないのだとふいに口にする。真実かどうか確かめるすべもなく、戸惑うダリア。

ララとダリア、ふたりを取り巻く友人たちもそれぞれに秘密や哀しみを抱えている。

ストーリーは母と娘を中心に、彼女たちを取り巻く人々の思いやできごとを織り交ぜながら流れていく。

記憶や知識をなくしていくララ。誇りであり心から愛した母をなくしていくダリア。愛する孫娘を失った、ララの友人、ブランキータ。人生においてはよく、ほんとうに失いたくないものから失っていく。それでも女たちは、根底を流れる哀しみに、小さな喜びの種をいつも植えながら日々を生きている。その営みをそっと見守る、庭の植物たち。

場面ごとに、ララが愛した薬草や、庭の植物の映像が挿まれる。これらがとても象徴的。

ゼンマイの仲間のシダ植物は、くるくると丸まった新芽が、子宮の中の胎児のように映し出される。 植物のひとつひとつのしぐさに、胸を揺さぶられる。

メキシコシティーの郊外の風景は、古い建物と緑のコントラストが、ほんとうに美しい。強いの光のせいか、植物の葉も花も、目に痛いほどの色彩と光を放つ。

何より色彩の美しさに目を奪われる映画。撮影はマリア・ノヴァロ監督の自宅の庭で行われたとのこと。日本の住環境との違いにため息をついてしまう。俳優として出演していたノヴァロ監督の息子さんのユニット、La Lenguaの音楽も静かに胸に響く。

スペイン語版の予告編のほうが音楽がよかったので上に貼りましたが、日本語版も貼っておきます。